ヒツジ、狼と恋をする。




「助けて…助けて、晶ぁ!!」



考えることをも放棄した脳が、無意識に叫ばせた言葉に反応するように。



ガンっ!!と何かを殴り付けたような音がした。



突如響いたその音に、ただ傍観していた女の子達から悲鳴が上がる。



私もビクリとして、反射的にそちらに目を向けた。



「おいてめぇら……自分がなにしてんのかわかってんだろうなぁ…」



今まで聞いたどんな声よりも低くて、どんな目よりも鋭い目。



この場にいる誰もが怖がるしか出来ないそれを兼ね備えた晶が、壁を殴り付けた体勢でそこに立っていた。



もちろん例外なく私も、恐怖を感じた人のうちの一人である。



助けに来てくれた、なんて思う前に、言葉すら出なかった。



「あ、あの、藤崎く…」



「あ?………ざけんな。
馴れ馴れしく呼んでんじゃねぇよブスが」



「っ!!!」



その言葉に、女の子は泣きそうな顔をした。



5人のなかには、すでに泣いている人もいるし、全員真っ青に青ざめている。



「これは、違って…」



「言い訳とか見苦しいんだよ性格ブス。
目障りだ、2度と俺の前に顔出すんじゃねぇ、気持ち悪い」



まるで別人のように罵りの言葉を綴り、汚いものを見るような目で女の子達を見ている晶。



私の知らない晶の姿に恐怖を感じると共に、私の心には初めての感情が沸き出ていた。



晶に初めて向ける…ううん、晶以外にも、向けたことなんてないかもしれない。



こんなにも激しく、はっきりとわかる怒りの感情は。