ヒツジ、狼と恋をする。






もう涙でぐちょぐちょで、前なんか見えなかったけど。


なんとなく、男が手を振り上げたような感じがした。


それで、殴られるんだなぁ、なんて直感して、衝動的に目を閉じたけど―――。


バシャン、と水が落ちたような音がして。



「ぐあっっ!?」



次の瞬間苦しげに呻いたのは、私じゃなくて男の方だった。


私の目の前で崩れ落ちた男を呆然と見つめていると、私の後ろからもバキッ!という音が聞こえた。


同時に、新たな呻き声も聞こえてきた。


ドサッと崩れ落ちる音がして、やっともう一人の男も殴られたんだと理解する。


そして、恐らくそれをやった張本人であろう人が私のまえに立って。



「おい、大丈夫か?」



手を、差し出した。



「あき……ら…………?」


「ああ。悪い…怖い目に合わせて…」



見上げると、形の良い顔が少し歪んでいた。


どうして…?


晶は何も悪くないのに。



「くっそ…てめぇ許さねえ…」


「あ?まだ生きてたのかお前」


「っ!」



晶が一睨みすると、男は縮こまって体を震わせた。


すごい…。



「………ツツジ、行くぞ」


「ぇ……………わっ!?」



ぐっと手を引かれたかと思うと、そのまま小走りでその場を離れる。