ヒツジ、狼と恋をする。




「前も言ったけどさぁ。
悩むのなんて、藤らしくないよ。

藤は藤らしく、正々堂々と勝負するのが似合ってる」



ほら、こんな感じ。



普段すっげーおっとりと言うか、やる気がないと言うか、そんな声音のやつがさ。



こうも真剣に言ってるの聞くと…なんか、納得出来るんだよなぁ。



モカの影が太陽と被って、眩しく見える。



俺はその眩しさに、目を細めた。



「………勝負ってなんだよ。
これはケンカじゃねぇぞ」



元が間違ってるとか言ったくせに、やっぱりケンカに例えるんだな。



まあたくさんケンカしてきたし、俺の印象なんてそんなもんで妥当だろうけど。



むしろぴったりすぎると、自分でも思うよ。




「ふふ、そうだったねぇ。

じゃあ私は文化祭の準備あるしぃ、教室戻るねぇ」



「…………あぁ」



「……頑張んなよ、藤」



モカは振り向き様にポツリと溢すようにそう言って、屋上を出ていった。



………俺らしく、か。



空に向かって、手を伸ばしてみる。



手は影になって、黒く見えた。



開いていた手をグッと握って、手のひらを自分側に向けてまた開く。



この手で………。



この手で、ツツジに触れたい。



この腕で、ツツジを抱き締めたい。