「あっ、もうこんな時間!華純と話してる場合じゃないよ早く橘くんのとこに行かないと!」
授業が終わった瞬間に行くつもりだったのに、橘くんの話題だったからついつい話し込んじゃったよ。
早くこの英和辞典を返しに行かないと。
1秒でも早く橘くんに会いたい。
借りた物の返却よりこっちがメインだったりする。
「じゃあ、もう行くね!」
「あ、ちょっと日菜子!?」
今度はわたしが華純の声に聞こえないふりをして、教室を飛び出した。
4組の教室は階段を下りて右に曲がったところにある。
トンットンッとリズミカルに階段を蹴っていき、
急いでいるせいか何段階か踏み外してしまいそうだった。



