「あ、そういえば英和辞典誰に借りたの?」


「えーっと………」


言うのがちょっと照れくさかった。

相手はみんなの憧れる王子様だし。


何より橘くんが好きだなんて、誰にも教えたことがない。


自分の好きな人を教えるのって普通に恥ずかしいじゃん?

ここ最近恋愛トークもしてないし、タイミングがなかったっていうか………。

まぁ、ただの言い訳なんだけどね。


嘘をつく理由もないし、


「橘くんに借りました……!」


ここは正直に答えるのが正解だろう。


橘くんと仲良い自慢するのってなんだか鼻が高いかも。

これも努力の賜物ってやつだ!



「橘くんって……橘旭陽のこと?」


「うん」


聞かれたから答えたのに、

いざ本当のことを話したら華純がぽかーんと口をあけて体がピタリと止まっている。


「華純……?」


名前を呼んでも、顔の前で手を振っても返事がない。