橘くんはたしかにかっこいい。
例えるなら、絵本に出てくる王子様そのものだ。
だけどそれは“見た目だけ”の話。
まず、橘くんは無口だ。
話しかけてもだいたいは無視することが多い。
世の中のクール男子と呼ばれる人なんかよりずっとずっとクール。
というか、簡潔に表すと冷たい。
次に、橘くんはかなりの毒舌だ。
さっきの告白の返事といい、わたしへの挨拶の返しといい、かなりの重症。
普通女の子が顔を赤らめて「付き合ってください!!」なんて言ったら、ちょっとは嬉しいものじゃない?
しかもすっごく可愛い後輩!
だけど橘くんは顔色ひとつ変えず「無理だから」と言っていた。
そんな冷たすぎる橘くんについた呼び名は女子生徒たちの“観賞用”の王子様。
後輩や先輩は橘くんの性格をよく知らないため、告白されることもあるらしいけどね。
いくら見た目がかっこよくても、橘くんを怖がる人が多いせいで水曜日の図書室はとても静かだ。



