橘くんの優しさに触れた瞬間、わたしはあっさりと恋に落ちていた。


「観賞用の王子様」なんて呼ばれてるけど、わたしにとっては「図書室の王子様」だよ。



普段クールなのに、時折見せる笑顔が好き。


本当の橘くんをみんなにも知ってほしいと思う反面、わたしだけが知っていたいという気持ちも生まれてくる。


だって、あんなの反則だもん。


何もしなくてもかっこいい人が、あんな風に笑ったら好きにならないわけがない。

学校中のみんなが恋に落ちてしまう勢いだ。



だから、今はわたしだけが知っている秘密なの。


2人きりで会える時間を手放したくはない。


そんな下心丸出しのちょっとした独占欲を持ちながら、今日も大好きなキミの元へ行く。





“あの日”を境に、毎週水曜日の放課後は図書室へ行くのが日課になっていた。



通い始めた最初の頃は、話しかけても無視か不機嫌そうな顔をするのがほとんど。



しかも「橘くん」と声を掛けたら「話しかけるな」と返ってくることも少なくなかった。


本を読むのに集中しているから邪魔されたくないのはわかるけど、さすがに橘くんの毒舌には心が折れかける。



それでもめげずに毎週通って行くと、少しずつ変化が起こった。