カウンターから見て正面の隣、右のテーブル。


そこがわたしのいつもの席。


ちらりとカウンターに座る橘くんに視線を向けると、


「急に変なこと言うな………」


なんて言いながら本で照れた顔を隠していた。



心の中で呟いたつもりだったはずが、つい口に出してしまった。


まぁ、いっか。

橘くんの照れ顔が見れたし、なにより………。



「思ったこと言っただけだよ」


冗談でも、嘘でもなんでもない、本当のことだから。



「ストレートすぎるのもどうかと思うけど」



「いいじゃん、彼女なんだし」



「よくない」



「はぁ……」とため息を吐く橘くんの吐息がいつもより耳につく。