橘くんと初めて会った日のことを今でもよく覚えている。


行き場をなくしたわたしが図書室に行くと、カウンターで本を読んでいたのが橘くんだった。


たまたま本棚を倒してしまったあのとき、面識もなかったわたしを橘くんが助けてくれた。

そして、恋に落ちたの。






「ふぅ………」


何度深呼吸を繰り返しても、胸の高鳴りはおさまってくれなかった。

心臓の音が脳内まではっきりと響いているよう。

それくらいドキドキしてうるさいの。



百合ちゃんと話を付けてから時は流れ、いよいよ放課後になった。

ついこの間までのわたしなら、すぐ家に帰るか中庭に居るかだっけど、今日は違う。

久しぶりに図書室の扉の前に立っている。