橘くんに別れを告げてから数日、顔を合わせることがパッタリ途絶えていた。


今まで偶然廊下をすれ違うことはあったし、教室の横を通れば嫌でも目に入っていたのに。


あれから1度も橘くんの姿を見ていない。


わたしが橘くんを避けていたように、橘くんもきっとわたしを避けているんだと思う。

少しも見ないなんて意識してないと絶対無理に決まってるから。


なんだか胸にぽっかり穴が空いたみたい。

視界に映るもの全てがモノクロでつまらないものに見えてくる。



「日菜子ってさぁ、最近元気ないよね?」


「………えっ!」


目の前の席に座っていた華純がじっとわたしを見ていたことに気がついた。


確信を突かれて動揺した手から箸が落ちそうになったけど、


「そっ、そんなことないよ〜」

なんとかヘラヘラと笑って誤魔化した。