「本、嫌いになったのか?」
「ちっ、違う!本を読むのは好きだよ……」
そう、本を読むのは今でも好きだ。
わたしが図書室に毎週通っていたのは本を読むためじゃなくて橘くんに会うためで、本は二の次。
手段の一部でしかなかったの。
「好きなら来いよ。瀬戸が居ない図書室はなんだか落ち着かないから」
そう言って、溢れていたわたしの涙を優しく指で拭ってくれた。
「………っ…」
触れられたところが熱い。
そうやって誰にでも優しくするから勘違いしちゃったんだよ。
わたしは特別なんじゃないかって、もしかしたらわたしが彼女でもいいんじゃないかって………。
惑わして、揺さぶって、わたしを何度も狂わせる。
片想いを続けている人にとって橘くんがくれる優しさは時に残酷だった。



