もしも今、3年生だったら残るは卒業だけ。

この学校に通うこともなくなる。



卒業すれば見なくて済むもの。




並んで歩く橘くんと百合ちゃんのことを。




あの後、結局2人の元へは戻らずに勝手に家へと帰宅した。

どんな顔をして戻ればいいのかわからなかったし、2人の間には入り込めないんだと痛感したから。



夏休み明けには、当然のように花火大会のことを橘くんに問い詰められた。


「なんで戻ってこなかったんだ。百合と2人で待ってたんだぞ」と、真剣な眼差しでわたしを見てきて。


心配してくれていたのにわたしは「急な用事思い出しちゃってさ。勝手に帰ってごめんね」とヘラヘラ笑ってごまかした。


百合ちゃんと2人で待っていたという言葉だけで胸をきつく苦しめられる。

わたしが逃げたんだから当然だよね。

自業自得ってやつ。


せっかく橘くんから声を掛けてくれたのにも関わらずまたわたしは逃げ出したんだ。

動揺していたのは丸わかりだったと思う。



今でも2人の重なる唇が頭にこびりついたように離れなの。

ふとした瞬間に、いつも蘇ってくる苦い記憶。


思い出したくないのに勝手に記憶は流れ、何度もわたしの胸を締めつけていた。

そろそろ涙が枯れそうなくらい泣き続けている。