「ここだ。着いたぞ」


「うっわぁ……!こんな場所あったんだ!」


人混みを抜けて川沿いを通り、見えてきたのは大きな川の橋の上。

街灯も少なく、わたしたち以外に人はいないみたい。


毎年ここの花火大会には来ていたけど、この場所に来たのは初めてだ。


水面に反射して映る無数の星たちは、夜空を見上げたときとは雰囲気がまるで違う。


幻想的……っていうのかな。

花火を見る前なのに、これだけで十分と思えてしまうくらい心を奪われた。


「素敵なところ……」


ここなら人目も気にせず橘くんと向き合える気がする。

呼吸を整えて、鼓動を落ち着かせて、真っ直ぐに橘くんを見据える。


「あ、始まる」


すると、橘くんの声を合図に、ドーンッと夜空に大きな花火が広がった。