「ありがとう」


橘くんの素っ気ない優しさが、どうしようもないほど心を揺らす。


わたしのペースに合わせてゆっくり歩いてくれたり、人混みに揉まれてしまわないよう庇って前へ進んでくれてたり。


あぁ、もうっ………!

橘くんは、いったいどこまでわたしを好きにさせるつもりなの?


彼を想う気持ちは日を重ねるごとに増していく。

自分でもどこまで堕ちていくんだろうって、わからなくなるくらい。



「好き」なんてたった2文字のくせに、この言葉にはたくさんの気持ちが詰まってる。


……花火の下で橘くんに告白、できたらいいな。


好き。

大好き。


心の中で唱えるだけで、身体中が震えるくらい緊張する。


でも、緊張なんかに負けてはいられないよね。

今日を逃したら、きっともう言えない。


こんなにロマンチックな場を与えてくれた神様に感謝しないとね。


花火が打ち上がったその時は、

ちゃんと橘くんに「好き」って言えるかな。