橘くんの吐息が、橘くんの匂いが、橘くんの全てが、すぐ側にある。


初めて全身に感じる橘くんのぬくもりは、とても安心できて心地がよかった。


男の人たちを欺くためとはいえ、またわたしは一瞬でも橘くんの彼女になれたんだ。


だからね、勝手に考えちゃうの。

わたしみたいな、何の取り柄もない人が彼女になっても嫌じゃないかなって。


橘くんの彼女になりたいって、言ってもいいかな。


その答えを聞くために、これから…………。



「震えは止まった?」


考え込んでいたわたしの頭に、橘くんの声が滑り込んだ。


「へっ!?……あ、うん」


「そうか」


それだけ言うと、橘くんはわたしの体をゆっくりと離す。


あっ………。

もう離れちゃうんだ。


ずっとあのまま、時間が止まってもよかったのに。