待って、
止まって、
と心の中で叫び続けて、ようやく速度を落としたぬいぐるみは近くにあった木の前で動かなくなった。
カランと草履を鳴らして走り、
「…………捕まえた!」
ようやくぬいぐるみに手が届いた。
全く、勢いがいいぬいぐるみだなぁ。
手に取って確認してみたところ、ほとんど汚れてないみたいで安心した。
橘くんから貰った宝物だもん、大事にしないとね。
ポンポンッと軽く汚れを払った後はまたすぐにすっぽりと腕の中に収めた。
やれやれ無駄な体力を使っちゃったよ。
よーし、橘くんの所に戻っ………。
戻っ……。
ーーーあれ。
橘くん、どこ?
くるりと振り返っても橘くんの姿はどこにも見当たらない。
人はたくさんいるのに肝心の橘くんがどこにも居なかった。
あれっ、どこ行っちゃったの?
こんなに混雑していたんだから簡単に離れるべきじゃなかった。
わたしがぬいぐるみを落としたばっかりに………。



