「ねぇねぇ、花火の場所取り行こうよ」
「早くしないといいとこで見れないね」
もうすぐ花火の打ち上げが開始されるということで、周りに居た人たちが一斉に動き始めていた。
「わわっ……!」
その勢いに飲まれて、鈍臭いわたしは当然のように動き出した人たちにぶつかってしまう。
ドンッと背中を押された反動で腕に包み込んでいたぬいぐるみが弾け飛び、
「あ、橘くんから貰ったぬいぐるみが………!」
人気の少ない茂みに転がっていくのが見えた。
歩く人たちの足元をコロコロと器用にすり抜けていくぬいぐるみに手を伸ばすのが精一杯。
もちろん、届くはずはない。
せっかく橘くんから貰ったばっかりなのに早く取らないと汚れちゃうよ〜!
「おい、瀬戸!勝手に離れるな」
大好きな橘くんの声も聞こえず「通してください」と、人と人の間をすり抜けて転がるぬいぐるみを追いかけた。



