「……なんですか?」


声を掛けてきたのは射的屋のおじさん。

ニコニコと笑いながら「彼女のためにさぁ」など彼女を連呼している。


彼女だと思ってくれて嬉しいけど、そんなに言うと「違います」ってそろそろ橘くんが否定しそう。


たしかにわたしは彼女じゃないけど、否定されたら少し寂しいな。



「可愛い景品たくさんあるよ〜」


橘くんの素っ気ない態度にもめげずに宣伝するおじさんのメンタルは強いと思う。

身長高いし、オーラもあるし、きっと他のお客さんより橘くんは目に留まりやすいんだろうなぁ。

道行く人たちが何度橘くんを気にしていたことか。

当然、本人は気づいていないと思うけど。


「あはは」と隣で苦笑いを零しながら並べてる景品を見てみると、たしかに可愛いものばかりある。


でも橘くんが射的なんて………絶対やらなそう。