手のひらをぎゅっと握りしめて百合ちゃんの言葉を待つ。


ドクン、ドクンと激しく波を打つ心臓のせいで聞き逃してしまいそう。


焦るなわたし。百合ちゃんがどんな子だっていいじゃん。

全部完璧な美少女よりよっぽどいい。


不敵な笑みを浮かべる百合ちゃんに負けじと逸らしたくなる瞳をグッと堪えた。


しかしその決意は案外脆く、いとも簡単に壊されることになる。




「わたしと旭陽はね、結婚の約束をしてるの」




氷のように冷たく、石のように重い声。

わたしの思考回路を奪うには十分すぎるくらいの言葉だった。


「え……?」


考える機能がすっぽり抜けてしまったのかと思った。


頭の中は真っ白で、呼吸をしているのかさえわからない。



橘くんを諦めたりしないって、振り向いてくれる確率が1%でも0%でも頑張れって言い聞かせたのに。


わたしは、何も言えなかった。