「ふっ……あなたみたいななんの取り柄もない人が旭陽を好きだなんて笑える」


昨日見た可愛い笑顔の面影がどこに見当たらない。

アイドルには裏の顔があるなんて話をネットで見たことがあるが、今まさにそれを目の当たりにしていた。

これが本当の百合ちゃんなの………?


「旭陽があなたを好きになるなんてありえないから。さっさと諦めたほうがいいわよ?」


優しくて可愛い百合ちゃんはいったいどこに消えてしまったんだろう。

こんなこと言う人じゃなかったと思うのに。


威圧に押され、体の震えが止まらない。

負けるなと何度言い聞かせてもわたしは自分が思っていたよりも遥かに弱かった。


立っているのが精一杯。


百合ちゃんの言葉は確かにその通りだと思うけど、認めたくない。


「なっ、なんでそんなことわかるの?」


認めてしまったらわたしは橘くんを諦めたことになる。


そんな軽い気持ちで好きになんかなってないよ。

誰よりも橘くんを好きな自信があるくらい、わたしは橘くんが好きだ。