旭陽に百合。


幼なじみだもん、名前で呼ぶのは普通だよね。

なのに……どうしてこんなに胸がチクチクと痛むんだろう。


「旭陽ったら昔はマンガしか読んでなかったのに、小説なんか読み始めちゃってさ〜」


「百合は戦隊ものアニメばっか見てただろ」


昔の話。

わたしの知らない橘くんの話。


こんなに楽しそうな顔ををして話す橘くん、さえわたしは知らないんだ。


みんなが知らない橘くんをわたしだけが知っているんだと思い込んでした。


でも、本当は違う。

幼なじみの百合ちゃんはわたしなんかよりずっと、ずっと、いろんな橘くんを知っているんだよね。


お似合いとしか言いようがない。


わたし、どうしてこの場所に居るんだろう。