「そりゃあ付き合えない理由を言うかな。その方が相手も納得してくれると思うし」



「ふーん。付き合えない理由、か……」



橘くんが呟くように繰り返すと、それ以上は何も言わずに本を読む手を動かし始めた。


「えぇ、それだけ!?」とツッコミたくなるところだけど、本の世界に入り始めた橘くんの邪魔はできない。


素っ気ないなぁとは思いつつ諦めてわたしも椅子に座り直して、持っていた本を開いてから「ふぅ……」と一息吐いた。



正直、さっきの女の子の告白を受けなくてほっとしてる。



だって橘くんに彼女ができてしまったらわたしの“恋”が終わってしまうもの。




わたしは現在、橘くんに絶賛片想い中だから。



なんであんな冷たい人が好きなの?って普通なら思うかもしれない。



それでもちゃんとしたきっかけがある。