燃え滓と夜にみる夢【短編】

向こうで、彼の親友が手招きするのが見えた。




もうそろそろ、戻ったら。
それと、煙草はやめたら?
おうちに妊婦さんがいるんでしょ。



「だから、もう少し此処に居させてよ」
あの頃とは違う、ずるい笑顔だ。大人になって身に付けた笑顔。そうだと解る自分も大人になってしまったのかと冷ややかに思った。


別にいいけど。そう答えて、私は自分の煙草に火を着ける。彼より細い煙草に。



そして……

彼が次に言う台詞も……

二本目の煙草を吸い終えるのを待ってから席を立つ自分も……


もう、わかってしまったから。





――今夜、見る夢はどっちの私の夢なのだろうか……

そんなことを考えながら。