「出産の用意を!」
「はい!」
それからもうてんやわんやで、気付いたら産まれていた。
「元気な男の子ですよ」
2時間での超スピード出産。
産まれてきた赤ちゃんを見た瞬間、涙が出た。
私と蓮央の、愛の証。
助産師さんたちには、「安産ですね」と言われた。
良かった……。
「咲誇!!」
蓮央が私のいる病室に駆け込んでくる。
「蓮央、疲れたぁ……」
「お疲れ。頑張ったな、ありがとう」
いつと同じようにわたしの頭を撫でてくれる蓮央。
その瞳は嬉しそうで、私も嬉しくなった。
「俺さ、考えたんだけど」
突然、蓮央は口を開く。
「葵には……俺みたいになってほしくない」
「え?」
どういう意味か、と首をかしげると、蓮央は私の髪をすきながら頬杖をつく。
「普通に、生きてほしいんだ。喧嘩に明け暮れるような人生を歩んで欲しくない」
あぁ、そういうことか。
蓮央はそれが不安なんだね。
「……大丈夫だよ、蓮央。ちゃんと愛を注いであげれば、大丈夫。だから一緒に育てよう?」
「…はは、当たり前だろ、馬鹿」
蓮央は笑って私の額にキスをする。
すると、同室のママさんたちから「キャーあんなイケメン初めて見たわ!!」という黄色い声がきこえた。
「じゃあ、ちょっと飲み物買ってくるな」
そう言って蓮央が出ていった後、同室のママさんたちに蓮央についての質問攻めにあったのは、言うまでもない。