「サー子!おーい、サー子!サー子ー!」


どこぞの取り立て屋よろしく、けたたましく鳴り響くノック音と、騒がしい呼び声に小沼 早希(こぬま さき)は盛大に舌打ちをしてベッドから体を起こした。
チラッと時計に視線を走らせれば、時刻はまだ朝の七時前。
既に目は覚めているが、まだ活動開始時間ではない。


「サー子ー!」


未だノック音が鳴りやまないドアを凶悪な目つきで睨みつける。
正しくは、その向こうにいるであろう人物を射殺す勢いで睨みつける。


「サー!ごふぉっ!?」


怒りに任せて勢いよく開け放ったドアは、鈍い音を立てて何かにぶつかった。


「うるっさいのよ!!このドアホで間抜けなバカ兄貴が!!!」


恐らくドアがクリーンヒットしたであろう額を抑えて、小沼 大和(こぬま やまと)が般若のような顔で怒鳴り散らす妹を見つめる。


「朝ご飯ならいらないから一人で食べやがれ!郵便物ならリビングに置いとけ!出かけるならわざわざ声掛けなくていいからさっさと行け!!」


ひとしきり怒りをぶちまけて多少気分がスッキリした早希は、真っ赤になった額をさする大和を残してさっさとドアを閉めにかかる。