ですから、君に、これだけは言っておきたいことがあります。

 それは、きちんと体を治し、美月と私に笑顔を見せて欲しい、ということ。

 そして、君自身が体を労(いたわ)ること。

 どうか約束して下さい。


 ──君の大好きな木を植えたことを、報告します。

 結婚前からよく通ったお店で、必ずそれが入っているスパゲッティを君が注文していたのを覚えていました。

 君は変わっていると思います。それ自体の味は、決して美味しくないと思いましたから。味を引き立てるものに過ぎないのに、そこまで大好きだったとは、思いもしなかったのです。

 さて、話を戻しますが、折角、木を植えるのなら、その木に意味を持たせたいと思いました。
 美月や私も含んだ、意味をです。きっと素敵だと、君にも喜んで貰えると思います。


 この手紙が君に届いた頃には、いろいろと考えた事も、私の中できれいに整理され、消えてしまっているだろうと思います。
 それだけの時間を、美月と過ごせましたし、感謝をしています。

 この先のことも、考えるようになりました。

 ですので、君は君で頑張って貰いたいと思うのです。掛け替えのないものを、失ってしまう訳にはいかないのですから。



5.約束(完)