お元気でしょうか?

 記憶では、確か二人同時だったと思います。

 ──秋空に散る木の葉のざわめきが……、そんな鼻唄混じりの君の歌詞に気をとられ、君と私は出会いました。

 必ず片方の手を繋いだ時は、もう一方を格好をつけて、私はポケットの中に入れていました。
 格好が良い筈もないのに、私はまだ、十分に若かったんだと、思い起こせば恥ずかしくなることしきりです。

 君と結婚してまもなく、美月が生まれ、女の子だったので君の一字を名前に付けました。名前を考えながら、書類を書いている時間が、とても楽しかったのです。

 それにしても、美月は生まれる前から、もしかしたらの話ですが、私たちのところにやって来たくて堪らなかったのだろうか? と思うことがあります。

 君のお腹の中にいるときから美月は大暴れし、必ず返事をしてくれていましたから。

 生まれてからは、元気にすくすくと育ち、いつも笑顔で、心底和ませてくれました。

 親が言うのも変な話ですが、とにかく美月本人が幸せそうです。このことに関しまして、君の意見とも、一致していたと思います。


 君が今回、この家から遠く離れ、一人でいたいと言った時、君の気持ちを思い、私もそのことに賛同しました。仕方がないとも、思いました。


 しかし、今は違います。

 それでは困ると気付いたのです。美月と私の両方の都合が悪いのです。

 特に私は、自分が思っているよりずっと弱かったですし、脆かったのです。娘の美月に支えられて、生きているようなものだったのです。