──ドキン、と心臓が跳ねる。

そして、今になってすごいことに気付いた。


今までこの私に、こんなに気さくに話し掛けてくれて。

しかも“メガネクラというあだ名が似合わない”なんて言ってくれた男子がいただろうか。

いや、いるはずがない!


皆私に近付こうともしないから、普通に接してくれることがすごく嬉しい。

早水くんって、いい人だなぁ……。


単純にそんなことを思って、ぽわんと頬を赤らめる私に、彼は階段の上を指差す。


「屋上、この上なんだよね?」

「あ、うん!」


ボケッとしてる場合じゃなかった!

キョロキョロと誰も見ていないことを確認しながら、私達は階段を上っていった。


屋上のドアノブをひねると、予想通り何の妨げもなく開く。

そっと押し開けると、足を組んでコンクリートに仰向けに寝転がっている、ひとりの男子がいる。

黒髪をそよそよと風になびかせる彼を見て、私はトクンと胸を鳴らした。


「やっぱりここに──」

「かぁなで~~!!」


私の声に被せて、早水くんが叫ぶ。

驚いてガバッと勢い良く上体を起こした如月くんに、彼はぴゅーっと駆け寄っていった。