笑って答えるけど、何とも想われていないことを再確認すると、やっぱり少し切ない。

「ふぅん……」と頷きながらも、横目で見てくる早水くんの探るような視線から、思わず目を逸らした。


気が付けば屋上に繋がる階段の前に着いていて、誰かに見られていないか確認しようとすると。

足を止めた早水くんが、私の顔を覗き込んで問い掛ける。


「そういえば名前、何て言ったっけ?」

「あ……冴島 菜乃です」

「ナノって小人って意味の?」


いつかも聞いたなぁ、それ。

化学準備室でのことを思い出して、クスッと笑いがこぼれる。


「如月くんにも同じこと言われました」

「ははっ、ホント? 僕達やっぱり類友ってやつかなー」


腕を組んで、なぜか自慢げな顔をする彼に、私はまた笑った。

すると、早水くんは身を屈め、私と目線を合わせてじっと見つめてくる。

まるで、私の眼鏡の奥まで覗くみたいに。

そのビー玉みたいな透き通った瞳から目を逸らせずにいると、彼はふっと笑ってこう言った。


「メガネクラなんてあだ名、全然似合わないね。菜乃ちゃん」