「全然すごくないよー」と言って軽く笑う早水くんだけど、外国に行ったことがない私からしてみればすごいことだ。

だからあんなに英語の発音がいいんだ、と納得。

渡り廊下を歩きながら、早水くんはさらに話を深めていく。


「奏とは昔からの付き合いでさ、どんな奴かも、今誰とも関わろうとしてないってことも知ってる」

「そうなんだ……」


ということは、如月くんが地味な格好をしている理由も知っているってことだよね。

うーん、すごく聞きたい。

けど、勝手に触れちゃいけないような気もするし……。


なんだかうずうずしていると、早水くんは意味深な言葉を口にする。


「でも、奏にとってキミは特別みたいだね」

「え?」


キョトンとする私に、彼はにこりと嫌味のない笑みを向ける。


「だって、奏の居場所を知ってるのはキミだけなんでしょ?」


あぁ、そういうことか。

“特別”というワードは嬉しいものだけど、あいにく私達はそんな素敵な関係じゃない。


「私がたまたま屋上に行くのを見付けて、渋々教えてくれただけだから」