悩む私に、早水くんは突然顔を近付け、耳元で囁く。


「大丈夫、僕は奏の事情をだいたい知ってるから」

「えっ……」


これまでのテンションとは違って、落ち着いた声。

それは信頼性を持っていて、この人なら本当に大丈夫かも、と直感した。

如月くんの事情を知っているなら、きっといろいろと内緒にしておいてくれるだろうし。


すぐに顔を離した早水くんを見上げると、彼はふわりと微笑む。

案内しようと決めた私は、文ちゃんに「先に食べてて」と伝えて、クラスメイトの注目を浴びつつ早水くんと一緒に教室を出た。



如月くんと同じくらいの身長の早水くんと廊下を歩いていると、すれ違う人が皆彼を振り返る。

イケメンなせいか、来たばかりの転入生だからか……そのどっちもかな。

そんなことを考えていると、彼は自ら私が知りたかったことを教えてくれる。


「僕、親の仕事の都合でアメリカに行ったり来たりしてるんだ」

「えっ、じゃあ帰国子女ってことですか!?」

「まぁそうなるかな。今回は中学卒業と同時に行って、一年ちょいで戻ってきたんだけど」

「すごい……!」