「さっきそこにいた男子に奏のいる場所聞いたんだけど、『メガネクラなら仲良いから知ってるんじゃない?』って言われたからさ」


誰ですか、そんなこと言う人は!

たしかに知ってるけど、仲良いわけじゃないって!

複雑な気分で、どう答えようか迷っていると、頬杖をついて静観していた文ちゃんが口を開く。


「もし場所知ってるなら教えてあげれば?」


その一言に、ぱっとさらに表情を明るくした早水くんが、標的を文ちゃんに移した。


「ナイスアシスト! キミの名前は?」

「……藍原」

「アイハラちゃん、よろしくー! アイの漢字はLove? ロマンティックな名前だね♪」

「違うし」


早水くんをぶった切った文ちゃんは、据わった目で私を見てくる。


「菜乃、早く連れてってやんな」

「えぇ!?」


文ちゃん、絡みづらいからって私に丸投げしてるでしょう絶対!


「うん、お願い。僕まだどこに何があるかわかんないから、案内してもらえると嬉しいな」


文ちゃんのことに気付いているのかいないのか、早水くんは純粋な笑顔でそう言った。

ど、どうしよう……。