「……その方が呼びやすかっただけだ」

「それでも、今まで“お前”としか呼ばれなかったから、なんかすごい嬉しかった」


ニコッと笑顔を向けると、如月くんは私から目を逸らして、くしゃっと頭をかいていた。

……もしかして照れてる?

わぁぁ、なんてレアな萌え姿!

いつか、もっと耳まで赤くして照れるような姿をお目にかかりたい……!


ぽわんと妄想を繰り広げそうになる私に、すでにいつも通りに戻っている如月くんがこんなことを言う。


「お前さ、ああいうことはもう言うなよ」

「へ?」


何のことかわからずマヌケな声を出すと、彼は少しだけ眉根を寄せる。


「『殴るなら私を』って、本当に殴られたらどうすんだ」

「あぁ! ですよね……ごめんなさい」

「第一、女に守られるなんて死んでも御免だ」


おぉ……男の中の男って感じですね。

妙に感心する私に、「……でも」と言葉を繋げた如月くんは、私を横目で見ると、ふっと穏やかに微笑む。


「そういう根性があるヤツ、嫌いじゃない」


──ドキン!と心臓が跳ねる。

見開く私の瞳に、魅力的な笑みが一瞬で焼き付いた。