ちょっとちょっと、本当に殴られちゃったらどーすんの、私！

でもでも、超絶イケメンな彼より、私みたいな何の価値もない地味女が犠牲になった方がいいだろうし……！


これからどうなるのかわからず、緊張で心臓はバクバク。

そんな私を横目で見る如月くんが、何かを言いたそうに口を開き掛けた時。


「へぇ、いい根性してんじゃん」


坊主でも金髪でもない、長髪の男子が私の肩に手を回してきた。

ぞわわっと身体中に悪寒が走る。


「きゃ──！」

「っ、菜乃！」


…………え？

如月くん、今“菜乃”って言った？


焦りが滲んだ声に、初めて名前を呼び捨てにされて、こんな状況なのに胸がドキンと揺れる。

けれど、すぐに別の声が私の思考を引き戻す。


「金出さねぇなら、お前の大事な彼女のカラダで払ってもらうとするか」


ひぇぇ！　まさかリアルでこんなことを言われるとは！

まだ殴られた方がマシ！と、私は必死で抵抗する。


「や、やだ！　絶対イヤ！」

「暴れんなよ」


ぐいっと抱き寄せられ、もうダメだと思った次の瞬間。

肩に乗せられていた腕の重さが、ふっとなくなった。