如月くんも訂正するのが面倒になったらしく、おとなしく「お疲れ様でした」と挨拶していた。

すると、店長さんがこんなことを言い出す。


「ソウくん、ちゃんと菜乃ちゃんのこと送ってあげるんだぞ?」


──ぴたり、私達の動きが止まった。

な、何を言い出すんですか!

如月くんが私に、そんな“女の子”としての対応をしてくれるわけないじゃん!

言葉を喉に詰まらせながら、隣をちらりと見やると。


「……夜ならまだしも、まだ5時っすよ?」


如月くんはボソッと呟いた。

ビン底眼鏡を掛けた彼の表情はわかりづらいものの、絶対に嫌そうな顔をしているだろうことは、今の発言から想像がつく。

けれど、店長さんは神妙な顔で言う。


「いやー最近は物騒だからな。この間も不良達が暴力沙汰を起こしたってニュースでやってたし」


その言葉に、如月くんがぴくりと反応を示したように見えた。

私も、この間文ちゃんが言っていたパープルのことを思い出す。

そのニュースでやっていたのって、まさか彼らじゃないよね……。