店長さんは、ピークを過ぎた後に「上がっていいよ」と言ってくれたけれど、中途半端は嫌だったから、如月くんと同じ午後5時まで働いた。

初めてのバイトで大変だったけど、とっても充実感があって、やってよかったと思えた。


「菜乃ちゃん、お疲れ様。今日は本当に助かったよ、ありがとう!」


日給が入った封筒を渡して、満面の笑顔でお礼を言ってくれる店長さん。

ここからは、私も顔見知りのパートのおばさんが交代してくれるから安心だ。

帰る支度が整った私も、笑顔で頭を下げる。


「こちらこそ! 働かせてもらえてよかったです」

「また人足りない時はお願いしちゃおうかなぁ」

「ぜひ! 喜んで手伝いに来ますよ~」


にこやかに話していると、メガネクラ男子に変身した如月くんがトイレの方から登場。

ここには更衣室というものはないから、どうやら彼はトイレで着替えているらしい。

そうまでして地味な姿を装っている理由は何なんだろう……。


なんとなく考えていると、「ソウくんお疲れ様」と店長が声を掛ける。

如月くんがバイトの面接を受けた時に名前を間違えて以来、もう直す気はないみたいだ。