ぶつぶつとふたりで話していると、後ろの方から男女の話す声が聞こえてくる。


「地味同士、仲良いよな」

「如月くん、冴島さんのどこがいいんだろ。ていうか、付き合ってるのかな」

「そんなわけないでしょ。すでに彼モテ始めてるし、すぐ他の女子んトコ行くって」


……あぁ、また始まった。

皆もう陰口じゃなくなってきてるし、私も言われることに慣れてきちゃったよ。

小さくため息をつくと、隣から「チッ」と聞こえた。

あ、久々に出ましたね、舌打ちが。


「ほんとうるせーな、アイツら」


ですよねぇ……と、苦笑しながら頷くと、彼は無表情で独り言みたいに言う。


「やっぱりこの機会を利用するしかねぇか」

「え?」


意味がわからず、見上げた彼の顔には不敵な笑みが生まれていて。

ドキリとした瞬間、怪しげに口角を上げた唇はこう動いた。


「ぶち壊してやる」


……えぇぇ~~!?

いったい何をする気ですか!?


驚愕しているうちに音楽が流れ始め、出て!と指示される。

彼の悪巧みしているような笑みを目の端に映しつつ、私は恐る恐る舞台に出た。