迎えた発表会当日。

前のクラスの発表が終わり、幕をひいた体育館のステージ上では、係の人が急いで大道具を準備している。


例のドレスを身にまとった私は、いつもの三つ編みに眼鏡スタイルで舞台袖に立っていた。

地味な格好をやめた如月くんだけど、今だけはビン底眼鏡を掛けている。


実は、休み明けからすぐ如月くんの噂は広まっていて、うちのクラスまで“ニセ地味男子”の素顔を見に来る人がいるのだ。

案の定、女子達は黄色い悲鳴をあげているし、私の気苦労は増える一方だよ……。


“私が彼女なんです”って名乗りたい衝動にかられる時もあるけど、さすがにそこまでの勇気はない。

それに、なぜか如月くんに“まだ地味な格好のままでいろ”って言われているし。

メガネクラのままじゃ、対抗してもきっと反感を買うだけだもんね。


ぐるぐると考えを巡らせつつ、出番が迫ってそわそわしていると、隣に腕組みした如月くんが近付いて耳元で話し掛ける。


「緊張してんの?」

「あ、うん……。こんな大勢の人の前に立つなんて初めてだし」

「極小ナノでもあのオーバーな動きなら目立つしな」

「そんなに大袈裟な動きしてたっけ、私……」