文ちゃんの言う通り……夢を見すぎていた自分に反省。だけど。


「でもソウくん、実は優しい人なんだとも思う」


顔を上げて言うと、文ちゃんは少しだけ眉を寄せる。


「どっちよ」

「うーん、どっちも持ってる人、かな?」


口も愛想も悪かったけど、椅子から落ちた私を(たぶん)かばってくれたり、模型を取ってくれたり。

さりげない優しさがちゃんと見えていたから。


「やっぱり人って話してみないとわからないね。外見だけで勝手なイメージ持つのはやめようって思った」


目に見えるものがすべてじゃない。

小説の文章の奥に隠された意図を探るみたいに、しっかりと向き合ってその人のことを理解しなくちゃ。


そんなふうに思っていると、文ちゃんはふっと柔らかな笑みを見せる。


「その言葉、菜乃のことメガネクラ呼ばわりする皆に聞かせてやりたいわ」

「文ちゃん……」


あぁ、ほんと文ちゃんが友達でよかった。

私は自分がどう思われていても構わないのだけど、そう言ってくれるだけで心が温かくなる。


私も笑みを返して、目の前の如月くんの背中に目線を移す。

彼だってそうだよね。地味で暗く見えるけど、本当の性格はわからない。