「やっぱり私の一番の王子様は文ちゃんだよー!」

「はぁ? やめてよ、あたしまで変な世界に巻き込まないで!」


抱きつく私を本気で嫌がってもがく文ちゃんとのやり取りを、クラスの皆はギョッとしながら眺めていた。



文ちゃんに引きはがされ、自分の席に座らされた私は、ついさっきの準備室での出来事を話した。

話している最中、どこかに行っていた如月くんが戻ってきて、静かに教科書を用意し始める。

俯いていていつものように顔は見えないけど、その髪型や背格好がさっきのソウくんと似ていて、なんかダブっちゃうな……。


なんとなく彼を見ていると、珍しく文ちゃんが興奮気味に身を乗り出してくる。


「すごいじゃん、この高校だったなんて! しかもその出逢い方、まさに少女マンガみたい」

「でしょう? でもね……でもね……現実の王子様はものすごく意地悪だった」


毒を盛られた影響で、肩を落としてうなだれる私に、文ちゃんは当然のように言う。


「そりゃあんたの脳内が全部フィクションだからよ。現実に容姿も性格も完璧なオトコなんてそうそういないって」

「はい、よくわかりました……」