まだ夕焼け空が広がる6時前、美紅が着なくなったと言って私にくれたブラウスにスカートを合わせたスタイルで、赤い橋に向かって歩いていた。

なんだかお祭りの時のことを思い出して、ちょっぴりセンチメンタルな気分……。


あの後、『学校始まったら、ちゃんと如月くんと話した方がいいよ。向こうは来るって約束したんだし、菜乃が引くことないんだから』と、文ちゃんは言ってくれた。

理由を聞くのは怖いけど、やっぱりそうした方がいいんだろうな。


ぼんやり思いを巡らせていると、そういえば……と、自分の恋とは関係ないことを思い出す。

あの日、私が琉依くんに助けられた後に会った文ちゃんも、なんか元気なかったような気がしたんだよね。

空元気というか、うわの空というか、どことなく様子がおかしかった。

ふたりでこの道を歩いている時は、そんなことなかったのに……。


「菜乃ちゃん!」


きらきらとオレンジ色に輝く小さな川を眺めながら考えていた私は、名前を呼ぶ声ではっとした。

もう近くに迫っていた赤い橋の上から、琉依くんがにこやかに手を振っている。

私も手を振り返して駆け寄った。