その声に怒りは感じられず、むしろ心配しているような口調に聞こえた。

何も言わずに今度は冷蔵庫を開け、お茶を取り出す。

二人分のグラスにそれを注ぐ俺を、琉依は少し睨むように見据える。


「菜乃ちゃん、奏が来るのすごく楽しみに待ってたのに」

「お前がいればいいだろ。……あんなふうに抱き合ってんなら」


思いのほか強めの口調で言ってしまった。

これじゃ嫉妬してんのバレるよな……。

一瞬、驚いたように目を開いた琉依は、すぐにバツが悪そうにまぶたを伏せた。


「……そっか、見てたんだ」


ぽつりと呟くと、今度は急に笑顔を作って明るい調子で言う。


「それで勘違いしちゃったのか。あれは挨拶の種類のハグ! 射的でいいヤツ当てたから嬉しくなっちゃってさー」

「茶化すなよ。あの時のお前、そんな楽しそうな顔してなかったぞ」


淡々と指摘すると、琉依の笑顔は力無い苦笑に変わった。

俺はダイニングテーブルにグラスを置き、椅子に腰を下ろしながら少し投げやりに言う。


「アイツが好きなんだろ? もう付き合えばいいじゃねーか」

「……それ、本気で言ってんの?」