「何でそんなに崇拝してるわけ? 音哉はともかく、俺なんて黙って姿くらましたってのに」


自嘲しながら問い掛けると、奴らは口々に言う。


「そこがカッコいいんすよ! 風とともに去りぬ的な感じで~」

「ふたりは最強だって、もうオレ達の中では伝説ですから! レジェンド!」

「……お前ら、喋るほどバカ丸出しになるから黙っとけ」


うなだれる俺。なんか明らかにレベルが下がってないか?

ちょろっと俺達の話聞いて、いつの間にか“最強でカッコいい”ってイメージが刷り込まれたんだろうな。

わずかに顔をしかめる俺に気付いた様子もなく、皆はさらに詰め寄ってくる。


「奏さん、戻ってくれるんですか!?」

「パープルには奏さんが必要なんです!」


マリと、彼女の友達が遠巻きに静観する中、遠くに聞こえる祭りの音を掻き消して、男達の声が響く。

それを断ち切るように、俺は重い腰を上げ、口を開いた。


「俺は、もうパープルに戻る気は一切ない」


一瞬、あたりは静寂に包まれた。

しかし、皆は困惑の表情を浮かべ、すぐに騒ぎ始める。