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見たこともない連中が集まる中、石段に座る俺に、マリが申し訳なさそうに言う。


「ごめん、奏……内緒にしてたのに、口すべらせちゃって」


マリは、中学の頃から俺がパープルの次期リーダーと言われていたことを知っていた。

だから駅で会った時に、俺はもうパープルに戻る気はないし、誰にも俺の名前は出すなと忠告しておいたんだけど。


「……別に気にすんなよ。元はと言えば、俺自身が悪いんだし」


俺がはっきりさせずに抜けたせいで、今また復活させようなんてことになってんだよな。

いい加減、逃げるのはやめろってことか……。


真っ黒な地面に目を落として考えていると、ほとんどが年下らしきメンバー達がわらわらと群がってくる。


「噂の奏さんにやっと会えた……!」

「オレ達、写真でしか音哉さんと奏さん見たことなかったから、感激っす!」

「マジで超絶イケメンっすね! 何で今まで気付かなかったんだ~」


そりゃ普段はメガネクラだからな。

つーかコイツら、俺達に会ったこともなかったくせに、ほんと崇拝してんだな……。

神様か何かになったみたいだが、気分が良いとは言えない。