腕の中にすっぽりと納まるのは、白い浴衣を着た小柄な子。

その子が顔を上げた時、見慣れた眼鏡が見えて、心臓がドクンと重い音を立てた。


菜乃を、琉依が抱きしめている。

どうしてそんなことになってんだ?

藍原はどこにいるんだよ?


いろいろな疑問が渦巻き、心の中はやりきれなさでいっぱいだ。

俺がちゃんと時間通りに来ていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。

アイツを抱きしめるのは、琉依じゃなかったかもしれない──。


ドクドクと血液が送り出される音をわずらわしく思いながら、険しい表情でふたりを見据える。

しかし、徐々に悔しさよりも諦めの気持ちが大きくなっていく。


やっぱり、琉依も菜乃のことが好きなんだな。本気で。

じゃなきゃ、あんなに大事そうに抱きしめたりしない。

あんなに愛おしそうな顔も見せないだろ……。


菜乃だって、嫌がったり抵抗するそぶりは見せない。

予想通り、きっとふたりの気持ちは同じのはず。


そう確信すると、金縛りにあったように動かなかった足は、自然と一歩後退していた。