文ちゃんは慣れた手つきで私の髪をいじり、ルーズなまとめ髪を作ってくれた。

これでコンタクトなら完璧なんだろうけど。

それでも、ローズフレームの眼鏡はなんとか浴衣姿に馴染んでくれている……と思いたい。


今日のお祭りは、私の家から徒歩15分のところにある神社を中心に屋台が並ぶ、比較的小さなもの。

でも、このあたりでは他にお祭りはないから、毎年結構賑わっている。


待ち合わせ場所にしたのは、神社の向かい側の、小さな川に掛かる赤い橋。

そこを目指して、薄い闇が広がり始めた空の下、文ちゃんとカラコロと下駄を鳴らしながら歩く。

少し背の高い文ちゃんを見上げると、白いうなじと凛とした横顔がすごく綺麗で、やっぱり見惚れちゃう。


「今日の文ちゃん、なんかすごい気合い入ってるね」

「えっ!」

「……え?」


何気なく口にした一言に、文ちゃんはすっとんきょうな声を上げるもんだから、私はキョトンとする。

見開いた瞳はなんだか動揺しているようで、不思議に思っていると、彼女はふいっと前を向いた。

その耳はちょっぴり赤くなっているように見える。