いろんな角度から浴衣姿を眺めていると、文ちゃんが後ろから私の肩に両手を置いて微笑む。


「あとはあたしが髪の毛まとめてあげるわ」

「ありがと、文ちゃん」


紺色にレトロな柄の浴衣を着こなし、髪をアップにまとめた文ちゃんは、すごく大人っぽくて綺麗。

女の私ですら見惚れてしまいそうになっていると、廊下を通り掛かった美紅が、ひょいっと居間に顔を出した。


「あれ、あたしの浴衣……」


キョトンとしながら言った美紅は、私と目が合うと驚愕の表情に変わる。


「お、おおお姉ちゃん!? どうしたの、急に女子になっちゃって! キモいよ!」

「……」


結局変わってもキモいって言うのね。

相変わらず姉の扱いがひどすぎる妹に、がっくりと肩を落としていると、文ちゃんがクスッと笑って言う。


「でも可愛いでしょ?」

「……ま、恥ずかしくはないね」


ボソッと吐き捨てて、すぐにどこかへ行ってしまう美紅。


「素直じゃないわねぇ。ツンデレってやつかしら?」


腰に手をあてて言うお母さんの言葉に、私と文ちゃんは顔を見合わせて笑うのだった。