夏祭り当日の夕方。

ちょっと慣れてきたメイクをした私は、白地に花柄の浴衣を身に付けて、姿見の前に立っていた。


「菜乃、可愛い~!」

「美紅の浴衣、ぴったりだわね」


私の両隣から鏡を覗き込むのは、笑顔の文ちゃんと、満足げなお母さん。


お祭りといったらやっぱり浴衣でしょう!と文ちゃんが言うから、お母さんに聞いたら美紅の浴衣があるって話になって。

ノリノリでお母さんに着付けられたというわけだ。


「浴衣なんて着たのいつぶりだろ」

「最後に着たのは小学一年生くらいじゃなかったかしら。アンタ全然色気づかないから、お母さん密かに心配してたのよ?」


それはすみませんねぇ……と苦笑する私。

お母さんは赤い帯を整えながら、嬉しそうに表情を緩める。


「でも、ついに菜乃も目覚めたのね~。お化粧なんかもしちゃって、やーらしー」

「やらしくはない」


即座につっこんだ。

でも、こんなにウキウキしてるお母さんは久々に見たかも。

私自身も、いつもと全然違う姿に胸が弾んじゃう。