私が呆然としている間にも、彼は何事もなかったかのように、着替えを持って事務所を出て行こうとする。

あぁ、まだ肝心なことを言ってないのに!


「あっ! 待って、夏祭り!」


ようやく動き出せた私は、必死に引き止めたものの。

まだボケッとしていたせいか、ずっと頭にあった夏祭りのことだけ口走っていた。

案の定、不思議そうに振り向く如月くん。


「夏祭り?」

「あ、うん、あの……一緒に行かない?」


わ~、勢いで言えた!

でもどんな返事が来るのか怖い……。


期待半分、いや、不安が3分の2くらいでドキドキしていると。

彼は少しだけ間を置いて、

「行かない」

と、きっぱり言った。


ズキン、と胸に痛みが走る。

やっぱりダメか……そうだよね、女子失格の烙印を押されてしまったばっかりだし。

覚悟はしていたけど、やっぱりショックで俯く。けれど。


「人多いとこが嫌なんだよ」


フォローしてくれるかのように、如月くんは言った。