夢……これは夢だ。

こんなこと、現実に起こるはずがないんだから!


頭の中でそう繰り返しながら、目を開けたまま硬直していると。

顔を近付けようとしていた彼が、ぷっと小さく吹き出した。


「……へ?」


私から手を離し、ククッと笑う如月くんに、張り詰めていた緊張の糸が途切れる。


「お前、マヌケすぎ。そんな顔してたら男は皆萎えるぞ」

「え……えぇ!?」


突然いつもの毒舌が戻ってきた彼は、不敵な笑みとともにこう告げた。


「失格」


ガーン!と重い金だらいが頭の上に落とされた気分。

失格って……もう女としての魅力を感じないと言われたも同然のような気が。

というか、なぜ勝手にキスの練習をさせられそうになって、勝手に失格にさせられたのでしょうか……。


いろいろと理不尽さを感じながらも、放心状態のまま内心さめざめと泣く私。

如月くん、謎すぎるよ……。

やっぱりこれは甘くない現実だったのだと、恥ずかしながら実感した。